ピアノの鍵盤の数は現在88鍵ありますが、なぜ88鍵なのでしょうか。
また、ピアノができたときから鍵盤の数は変わらなかったのでしょうか。
88鍵以上のピアノがあるとしたら、どのような音を出すのか気になりますよね。
実は鍵盤の数は音域と関係があるようです。
今回は、ピアノが88鍵の理由と、どのようにして音がでるのか、ハンマーと弦の仕組みも併せてご紹介していきます。
ピアノの鍵盤は最初から88鍵だったの?
ピアノの鍵盤は最初88鍵ではなかった
ピアノの鍵盤は最初から88鍵ではありませんでした。
元をさかのぼっていくと、1709年、イタリアの楽器製作者のクリストフォリ(1655〜1731)によって「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」を発明したことから始まりました。
これは当時、チェンバロでは出すことのできなかった音の強弱「フォルテ(大きな音)もピアノ(小さな音)も出せるチェンバロ」が、この楽器によって叶えられました。
これが「ピアノフォルテ」と呼ばれるようになり、「ピアノ」と省略されるようになったのです。
この時は、鍵盤は54鍵でした。
ピアノの発展と共に増えていった鍵盤
18世紀に入ると、ピアノ工業が大きく発展していき、奏者たちの「表現力をもっと出したい」をいう要望とともに18世紀後半から61鍵、68鍵…と徐々に増えていき、1890年頃に88鍵になったと言われています。
大きなホールで演奏を聴くためには、音量や音の伸びまで要求されるようになって、ピアノの弦、それを支えるためのフレームまでも改良が進み、丈夫な鉄骨が使用され始めたのです。
ピアノの鍵盤の数と音域の関係
ピアノの音域とは
しかし、ピアノの鍵盤の数は88鍵から増えることはありませんでした。
その理由は、音域にあります。
本来、人間の耳は約20ヘルツから20000ヘルツまでの範囲の音を聴きとることができます。
また、音程としては20ヘルツから4000ヘルツまで聞き分けることができるのです。
したがって、ピアノの88鍵の音域は約27.5から約4186ヘルツなので、もし、これ以上鍵盤の数を増やしたとしても人間の耳には、低音は唸り、高音はとても耳障りなノイズにしか聞こえなくなってしまうのです。
88鍵の以上のピアノがある?
88鍵以上のピアノも存在します。
ベーゼンドルファー社の「ベーゼンドルファー・インペリアル」と呼ばれているグランドピアノは97鍵で、低音部に9鍵多くつくられています。
その9鍵は白鍵の部分が黒く塗られているのです。
実際にこの黒い鍵盤を使う曲はあるの?
この部分は弾くためにあるというよりも、さらに長く弦を張り、他の音が振るえることで豊かな響きが出るように作られたものだと言われています。
鍵盤が多い分弦の長さも長くなるので、一般のグランドピアノの奥行が約2m75㎝なのに対し「ベーゼンドルファー・インペリアル」は2m90㎝もあるそうです。
ピアノの音が出る仕組み
ピアノの鍵盤を押すとどうして音が出るのか、仕組みについて説明します。
ピアノの鍵盤とハンマー
ピアノを叩くと、鍵盤とつながっているハンマーが下から上がって弦を叩いて振動させます。こうして弦をたたくことで音が出るのです。
この仕組みをアクションと呼びます。
以前は、ハンマーが弦を打って、一番下に降りてから次の打鍵に備える、という動きが普通で、早い連打が困難な造りでした。
しかし、繰り返し運動ができる「レペティション機構」が発明され、ハンマーが一番下まで降りる前に次の打鍵に備えることができるようになったため、細かい連打が可能になりました。
この「レティペション機構」は、ピアノの構造上、グランドピアノにだけ採用されています。
したがって、細かな動きを必要とするピアノの演奏は、グランドピアノの方が向いていると言えます。
ピアノの音の高さは弦で決まる
ピアノが音を出すためには、ハンマーだけでなく、多数の部品があって初めて音が出ます。
その中でも、ピアノの音の高さを決める「弦」が重要な役割を果たしているのです。
では、一体何本の弦を使っているのでしょうか。
弦の本数は約230本!
ピアノの鍵盤に対して、弦の数は約230本あります。
鍵盤が88鍵なのに、約230本の弦をどうやって張るの?
1つの鍵盤に対して、中音と高音には3本ずつ弦を張っています。
そして低音は、最低音にいくにつれて、本数を3本から1本へ減らしています。
音の高さは弦の本数によって、張る本数は異なっているのです。
弦は響きを豊かにしてくれる
なぜ、中音部と高音部は3本ずつ弦が張られているのでしょうか。
ポイント
- 音量を大きくさせるため
- 音の響きを豊かにさせるため
このように重要な役割を持っているのです。
1音に3本の弦を一つのハンマーでたたいた時に、その接触状態や弦の支持位置が1弦ずつ違っています。
このように3本の弦は、等しい振動にならないことから、弦を打った後の余韻が豊かな響きとなって出ているのです。
弦は長さも太さも違う!
弦の長さは、低音から高音にいくにしたがって短くなっていて、太さは高音にいくほど細くなっていくのです。
また、低音の弦は巻き線弦で太く、中音と高音は巻き線ではなく、裸線を使用しています。
ピアノの鍵盤の数は音域と深い関係に合った!
ピアノの鍵盤の数は実際に人間が聞き取れる音域と関係があることが分かりました。
88鍵以上鍵盤があったとしても、弾くことにはほとんど使われていません。
そして、ピアノの心地よく聞こえてくる音は、ピアノの弦やハンマーなどといった複雑な仕組みと大きく関係しています。
ピアノの内部を見る機会に、よく観察してみるとピアノに対しての愛着がさらに増すのではないでしょうか。